店舗デザインというのは、その目的は「集客」にあるわけですから、お客さんの視点を意識したデザインが求められます。しかしお客さんは、店の外観や内観がおしゃれであることだけを訪問動機とするわけではありません。確かに店舗のデザインが決め手となることはあるでしょうが、一度足を運んだお客さんが、そのまま常連客になるとは限らないのです。客足の途切れない店というのは、往々にして居心地にも拘っています。つまり、デザインと居心地とがバランスよく併存する空間を作る必要があるのです。客の居心地に影響を与えるのは、何もサービスだけではありません。サービスを提供する「場」も重要因子となり得ます。ですから店舗をデザインする時は、お客さんにとってサービスを利用し易い空間を確保することも大切になるのです。
例えば、ベテランのデザイナーであれば、受注してすぐに間取りや客単価をイメージすることが出来るでしょう。その際、お客さんの一人が利用できる「専有面積」を狭めてしまわないように気を遣いながら、洗練されたデザインを生み出さなければなりません。客単価が低ければ、座席数を増やす対応が迫られますが、それでも専有面積を狭め過ぎるわけにはいきません。お客さんの不快感が増幅することが予測できるからです。一つの方策として回転率を高めるのも有効だと思われます。客単価が高ければ、座席数を減らし、ゆったりと寛いでもらうことが出来ます。また、お客さんと店員の動線をどのように設計すれば身動きに支障のない空間を醸成できるかも、合わせて考えることになります。
お客さんの居心地を高める上で、デザイナーの役割は重要です。空間やレイアウトのデザインだけでなく、椅子の座り心地まで確認するデザイナーもいるくらいです。拘りを実現しようとするデザイナーに対しては、相応の報酬を準備しなければならず、コストが膨らみます。最終的には経営者の判断に委ねられるところです。